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    yotuba-noujou dayori (Japanese Edition)

    By haradayoshinari

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    平成18年(2006年)より宮城県角田市で山林・畑つきの一軒家に出会い、「よつば農場」と名付け、(仙台市内に通勤しつつも)農のある暮らしをさらに深めている最中でしたが、東日本大震災と原発事故に遭い、いろいろ迷った末に、その後は仙台市内に戻りました。これは、未曽有の災害と原発事故の後、3年のあいだに身の回りで起きたことから、自分なりに考えたことをまとめたものです。

    東日本大震災以降、この間、気分がすごく落ち込むこともありましたが、この3年間の記録をまとめることで、区切りをつけて、ようやく前を向いて歩いていこうという気に少しなれました。この思考の記録は、非常に私的なものかもしれませんが、今後また大きな災害、そしてあっては欲しくないですが同じような原発事故が起こった時に、自分以外の人たちにとっても役に立つのではないかと思い、公開出版しました。

    いま、この国のリーダーたちは、原発事故がまるでなかったかのように事故を矮小化し、素知らぬふりをして原発再稼働・輸出に励んでいます。あれだけの事故で誰も何も責任をとらないということが許されて、いいのでしょうか?そういう、素朴な私の疑問はまだまだ尽きず、答えも得られないまま、日常生活は続いていきますが、ひとまず、震災以降の3年間におこった社会の記録も兼ねて、ここに「よつば農場だより」を出版できたことは、幸いです。

    以下に、いくつかの章を抜粋いたします。興味を持っていただき本を手に取っていただければ幸いです。

    2011年2月27日 
    ハワイ旅行
    上の娘が今年の三月に小学校を卒業する。そこで、卒業記念旅行として「ハワイ」に行ってきた。三月以降は農作業も忙しくなり旅行などできないので、今のうちにしておこうとなったわけだ。初めての海外旅行、子供たちの思い出になったと思う。
    わずか一泊二日の旅だが、―と、ここで気づいたと思うが、われわれ東北人にとっての「ハワイ」は福島県いわき市にある常夏の国、常磐ハワイアンセンターなのだ。さて、一日目は「ハワイ」のすぐそばにある水族館「アクアマリーン福島」を見学した。ここは、初めてさんまの人工飼育に成功したところとしても有名なところだ。展示も素晴らしく見ほれてしまうが、ちゃんと自然環境などについて学習できる素晴らしいところでもあるのだ。しかし、刺身が好きなぼくなどは、つい美味しそうだな、などと思ってしまうのだ。

    そして、二日目はいよいよ「ハワイ」だ。ここは昔、石炭が掘れたところだが、エネルギー革命のせいで閉炭となり、そこに温水プール施設を建てたものだ。炭鉱で働いていた一家の娘さん達をフラガールとして踊らせ、それが売りとなり人気を博したものだ。その経緯は映画『フラガール』に詳しい。
    今日は「フラ」の全国大会が行われていてそのせいで入場料が半額になり、たくさんの人で込み合っていた。子供たちも水上滑り台などをして満足したことだろう。
    「ハワイ」へは高速道路を使えば我が家から二時間半くらいでいける近い外国だ。大人たちは車も運転し、くたびれたが、子供たちは楽しく遊んで満足だったのではないだろうか。

    2011年3月2日 
    踏み込み温床 
    踏み込み温床を作った。うまく材料が発酵し温度が上がり始めている。これまでは、電気温床で夏野菜を発芽させたり苗を育ててきたが、踏み込み温床がうまく行けば、東北電力の電気を使わずに育てられるかも知れない。
    踏み込み温床は枠を作り、そこへ藁、落ち葉などの有機物を積み込み、間にぬかなどの発酵促進剤を入れる。有機物が発酵し始め温度が上がりその熱を利用して、夏野菜の苗を育てる。
    ナスなどは発芽温度が三十度近いので、普通ならこの時期に種まきはできない。だから電気などにより温度を得て発芽させる。今から苗を育てていると、五月の上旬に大きな苗を畑に定植でき、早くたくさん収穫できる。
    踏み込み温床は昔ながらの智慧と技術だ。福島のやまなみ農園でこの技術を知ったが、ようやく似たようなものができるようになった。温度を上げるのに使った有機物は、今度は来年の苗用の用土に出来るというのも、この技術の優れた点だ。

    2011年3月5日 
    チマサンチュの定植
    寒さは依然厳しい。今朝は厚い氷が張った。
    霜が当たらない工夫をして野菜苗を少しずつ育てている。今日はレタスの一種チマサンチュの苗を定植した。チマサンチュは韓国の焼肉で肉をまいて食べるのに使うレタスだ。チマサンチュは比較的寒さに強い。しかし、あまりに強い霜に当たれば、やられてしまう。そこで、定植後に日光と雨を通す布をかけてやり、二週間くらい様子を見る。
    二週間もすれば彼岸なので、その頃は寒さもずいぶん和らいでいると思う。収穫は五月のはじめくらいだろうか。

    2011年3月10日 
    地震
    昨日、今日と宮城県で地震があった。震度は5や4であったが、昨日は車に乗っていて気づかず、今日は朝寝ていて気づかなかった。子供たちは昨日は学校の授業中に揺れて驚いていたようだったが、周りでは全く被害が出ていない。
    寒さが続いていて、今朝はうっすら雪が積った。冬野菜はなくなってくるし、春の野菜もまだ早いということで、端境期だ。トンネルを作ってその下にカブの種を播いたり、また温床の上でなす・カボチャ・ズッキーニなどの種を播いた。お彼岸まであと二週間、寒さも一段落するのだろうか。
    今週末は、高校の時の野球部の監督が、群馬から仙台の温泉に旅行で来ることになっている。酒を飲みながら当時の話をするのが楽しみだ。

    2011年3月11日
    (午後二時四六分、東日本大震災を引き起こす巨大地震が起こる)

    2011年3月17日 
    無事でした。
    皆様、ご心配ありがとうございます。
    ここ宮城県角田市はようやく今日電気が通じ、電話も繋がるようになり、パソコンを開くことが出来ました。
    我が家は、倒壊もせず、家族も無事です。
    地震の直後から、我が家は比較的恵まれていました。
    プロパンガスなのでガスは使えるし、まきで暖をとることもでき、食料の在庫も十分あります。
    電気がなかったですが、暖かい布団で十分寝ることが出来ました。
    改めて、農のある暮らしの強さを感じました。
    原発の状況は注意深く見守る必要がありますが、今は薪作りや春の農作業の準備などしています。

    作者プロフィール:原田 禎忠(はらだ よしなり)
    1963年東京生まれ。20代、30代で海外を放浪しつつ、岩手県で3年間農業研修生を体験。宮城県仙台を生活の拠点とし家族を持ち、塾の非常勤講師を現在(2015年)まで16年余り継続中。自給的な暮らしをめざし宮城県南部の里山の中に引っ越し、薪ストーブ・薪風呂の生活をしていたところ原発事故にあい、仙台の都会暮らしに舞い戻る。「よつば農場」は、人が集い、季節の移り変わりの中で自然との交流を体験できる場を目指して活動していたが、いまは中断中。ぜひ、読んだ感想などお聞かせください。筆者連絡先は、harada.yoshinari@gmail.com
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