はじめに
労働トラブルにはいろいろあるけれど、なかでも「解雇」は、内容が深刻で数も多いトラブルです。
厚生労働省が発表している資料(平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況)によると、個別労働紛争の内訳は、
1位 いじめ・嫌がらせ 19.7%
2位 解雇 14.6%
3位 自己都合退職 11.0%
と、なっています。
2位か・・・と、思われるかもしれませんが、じつは、解雇をめぐるトラブル件数は、平成14年度から、ずっとトップでした。平成23年度に、「いじめ・嫌がらせ」に逆転されましたが、今でもやっぱり「解雇」が「隠れトップ」なのではないかと思っています。
どうしてそう思うのか。
根拠は、労働トラブル当事者の「解雇」に対する認識です。労働トラブルの現場で、「解雇」という言葉が頻繁に出てきます。しかし、その約7割以上が、間違って使われています。これが、筆者の経験に基づく実感です。当事者は「解雇をめぐるトラブル」と認識していても、統計的に、「いじめ・嫌がらせ」や「自己都合退職」の中に分類されているものが、相当数含まれていると考えています。
これは、「解雇か解雇でないか、労使双方の認識が異なる」といったレベルの話ではありません。もっと基本的な「解雇という言葉の意味そのものを取り違えてる」という話です。単純な話ですが、とても深刻な状況です。
過去の判例により確立された解雇権濫用法理により、使用者(会社)の「解雇権」には、厳しい制限が課せられています。労働者は手厚く保護されているといえるでしょう。
けれども、「解雇」の意味を間違って認識していたらどうなるでしょうか?「解雇」だと思っていたのに「解雇」でなかったら、労働者は保護されないかも知れません。思わぬ窮地におちいることもあるのです。
そもそも、言葉の意味を間違えたままで、労使間の話が通じるわけがありません。話をすればするほど信頼関係が壊れていき、トラブルがこじれていくケースだってあります。
意味の取り違いは、どうして起きるのでしょうか?
その原因は、昔から日常会話で使われる日本語としての「解雇」の意味と、労働法での「解雇」の意味との間に、微妙なギャップがあることです。
本書では、この違いを明らかにし、「解雇を正しく認識して、労働トラブルにかしこく対処できるようになること」を目的として書きました。
あなたは、「解雇」とは、どんな意味だと思いますか?
「解雇 = 雇用契約を解除すること」
と思っていないでしょうか?
または、会社をやめるにあたって、「解雇」と「辞職(自己都合退職)」しか思いうかばず、
「解雇 = 会社の都合により、雇用契約を解除すること」
「辞職(自己都合退職) = 労働者の都合により、雇用契約を解除すること」
という認識をしていませんか? 思い当たるなら、今すぐ改めた方がいいかも知れません。
なお、文中の例は、実際によくある例ですが、特定の事例ではありません。すべて架空の事例です。あらかじめ、お知らせしておきます。
< 著者紹介 >
大阪府大阪市出身
特定社会保険労務士
個別労働関係紛争 あっせん代理人
19年間務めてきた会社が倒産。最後の人事担当者として残務処理にあたる。
平成23年 社会保険労務士登録
平成25年 特定社会保険労務士 付記
文具好き
< 目 次 >
はじめに
第1章 間違えている人は、「解雇」をこんな意味だと思ってる。
1-1 「ことばの魔術師」が愛用した辞書
1-2 ほかの辞書ではどう書いている?
< パターン1:単純に、従業員をやめさせれば解雇になる? >
< パターン2:使用者(会社)側から従業員をやめさせたら、解雇になる? >
< パターン3:使用者(会社)の都合で従業員をやめさせれば、解雇になる? >
< パターン4:使用者が一方的にやめさせたら、解雇になる? >
1-3 労働トラブルの現場では、わずかな違いが大違い
1-4 労働トラブルの現場で、国語辞典の解雇の意味から解雇かどうかを判断するのは、不適切である。
第1章 まとめ
第2章 トラブル例で確認する、解雇をめぐる悲劇
2-1 「やめてくれ」って言われたから、やめたのに・・・
<解雇をめぐる労働トラブルの例>
2-2 「解雇の4つの要素」を当てはめて考えてみると・・・
2-3 Aさんのケースが「解雇」なら・・・
2-4 もしも「解雇でない」なら・・・
2-5 「解雇」でも「辞職」でもない、「第3の退職」とは
第2章 まとめ
第3章 これが、労働法における「解雇」の定義だ
3-1 「合意があるかないか」で判断が変わる。
3-2 解雇かどうか、3つのチェックポイント
3-3 チェックポイントに該当しない、解雇ではない例
〈 雇用契約がなかった例 〉
〈 雇用契約の途中でない例 〉
〈 使用者側から契約解消していない例 〉
〈 労働者が雇用契約の解消に合意した例 〉
3-4 解雇かどうかは、形式ではなく実態で決まる
第3章 まとめ
第4章 「解雇」かどうかをめぐるトラブル
4-1 解雇かどうかは、誰が決めるのか?
4-2 労働者が注意すること
〈退職届・退職願は、「解雇ではない」という証明書〉
〈退職後の行為についての誓約書を出すか出さないかは、労働者の自由〉
〈「いやなら、やめろ」は、解雇とはかぎらない〉
4-3 使用者(会社)が注意すること
〈解雇でないのに、解雇通知書をだしてはいけない〉
〈日常会話感覚で「解雇」という言葉を使ってはいけない〉
〈就業規則・労働契約書の「解雇」は適切ですか?〉
〈その他、よくある不適切な例〉
第4章 まとめ
第5章 雇用保険と「解雇」の取り扱い
5-1 雇用保険の離職理由は、細かくわけられている
5-2 離職理由と給付との関係
5-3 離職票は、最低限ココに注意しよう
第5章 まとめ
おわりに
注意事項
奥付
労働トラブルにはいろいろあるけれど、なかでも「解雇」は、内容が深刻で数も多いトラブルです。
厚生労働省が発表している資料(平成25年度個別労働紛争解決制度施行状況)によると、個別労働紛争の内訳は、
1位 いじめ・嫌がらせ 19.7%
2位 解雇 14.6%
3位 自己都合退職 11.0%
と、なっています。
2位か・・・と、思われるかもしれませんが、じつは、解雇をめぐるトラブル件数は、平成14年度から、ずっとトップでした。平成23年度に、「いじめ・嫌がらせ」に逆転されましたが、今でもやっぱり「解雇」が「隠れトップ」なのではないかと思っています。
どうしてそう思うのか。
根拠は、労働トラブル当事者の「解雇」に対する認識です。労働トラブルの現場で、「解雇」という言葉が頻繁に出てきます。しかし、その約7割以上が、間違って使われています。これが、筆者の経験に基づく実感です。当事者は「解雇をめぐるトラブル」と認識していても、統計的に、「いじめ・嫌がらせ」や「自己都合退職」の中に分類されているものが、相当数含まれていると考えています。
これは、「解雇か解雇でないか、労使双方の認識が異なる」といったレベルの話ではありません。もっと基本的な「解雇という言葉の意味そのものを取り違えてる」という話です。単純な話ですが、とても深刻な状況です。
過去の判例により確立された解雇権濫用法理により、使用者(会社)の「解雇権」には、厳しい制限が課せられています。労働者は手厚く保護されているといえるでしょう。
けれども、「解雇」の意味を間違って認識していたらどうなるでしょうか?「解雇」だと思っていたのに「解雇」でなかったら、労働者は保護されないかも知れません。思わぬ窮地におちいることもあるのです。
そもそも、言葉の意味を間違えたままで、労使間の話が通じるわけがありません。話をすればするほど信頼関係が壊れていき、トラブルがこじれていくケースだってあります。
意味の取り違いは、どうして起きるのでしょうか?
その原因は、昔から日常会話で使われる日本語としての「解雇」の意味と、労働法での「解雇」の意味との間に、微妙なギャップがあることです。
本書では、この違いを明らかにし、「解雇を正しく認識して、労働トラブルにかしこく対処できるようになること」を目的として書きました。
あなたは、「解雇」とは、どんな意味だと思いますか?
「解雇 = 雇用契約を解除すること」
と思っていないでしょうか?
または、会社をやめるにあたって、「解雇」と「辞職(自己都合退職)」しか思いうかばず、
「解雇 = 会社の都合により、雇用契約を解除すること」
「辞職(自己都合退職) = 労働者の都合により、雇用契約を解除すること」
という認識をしていませんか? 思い当たるなら、今すぐ改めた方がいいかも知れません。
なお、文中の例は、実際によくある例ですが、特定の事例ではありません。すべて架空の事例です。あらかじめ、お知らせしておきます。
< 著者紹介 >
大阪府大阪市出身
特定社会保険労務士
個別労働関係紛争 あっせん代理人
19年間務めてきた会社が倒産。最後の人事担当者として残務処理にあたる。
平成23年 社会保険労務士登録
平成25年 特定社会保険労務士 付記
文具好き
< 目 次 >
はじめに
第1章 間違えている人は、「解雇」をこんな意味だと思ってる。
1-1 「ことばの魔術師」が愛用した辞書
1-2 ほかの辞書ではどう書いている?
< パターン1:単純に、従業員をやめさせれば解雇になる? >
< パターン2:使用者(会社)側から従業員をやめさせたら、解雇になる? >
< パターン3:使用者(会社)の都合で従業員をやめさせれば、解雇になる? >
< パターン4:使用者が一方的にやめさせたら、解雇になる? >
1-3 労働トラブルの現場では、わずかな違いが大違い
1-4 労働トラブルの現場で、国語辞典の解雇の意味から解雇かどうかを判断するのは、不適切である。
第1章 まとめ
第2章 トラブル例で確認する、解雇をめぐる悲劇
2-1 「やめてくれ」って言われたから、やめたのに・・・
<解雇をめぐる労働トラブルの例>
2-2 「解雇の4つの要素」を当てはめて考えてみると・・・
2-3 Aさんのケースが「解雇」なら・・・
2-4 もしも「解雇でない」なら・・・
2-5 「解雇」でも「辞職」でもない、「第3の退職」とは
第2章 まとめ
第3章 これが、労働法における「解雇」の定義だ
3-1 「合意があるかないか」で判断が変わる。
3-2 解雇かどうか、3つのチェックポイント
3-3 チェックポイントに該当しない、解雇ではない例
〈 雇用契約がなかった例 〉
〈 雇用契約の途中でない例 〉
〈 使用者側から契約解消していない例 〉
〈 労働者が雇用契約の解消に合意した例 〉
3-4 解雇かどうかは、形式ではなく実態で決まる
第3章 まとめ
第4章 「解雇」かどうかをめぐるトラブル
4-1 解雇かどうかは、誰が決めるのか?
4-2 労働者が注意すること
〈退職届・退職願は、「解雇ではない」という証明書〉
〈退職後の行為についての誓約書を出すか出さないかは、労働者の自由〉
〈「いやなら、やめろ」は、解雇とはかぎらない〉
4-3 使用者(会社)が注意すること
〈解雇でないのに、解雇通知書をだしてはいけない〉
〈日常会話感覚で「解雇」という言葉を使ってはいけない〉
〈就業規則・労働契約書の「解雇」は適切ですか?〉
〈その他、よくある不適切な例〉
第4章 まとめ
第5章 雇用保険と「解雇」の取り扱い
5-1 雇用保険の離職理由は、細かくわけられている
5-2 離職理由と給付との関係
5-3 離職票は、最低限ココに注意しよう
第5章 まとめ
おわりに
注意事項
奥付