『路上(オン・ザ・ロード)』で有名な作家ジャック・ケルアックの、語られなかった物語。
1996年、ケルアックが『路上』を出版した頃住んでいたフロリダの家が発見された。
これだけ有名な作家でありながら、没後30年近く知られていない家があったというのは驚きである。
ケルアックが晩年をフロリダで過ごしたことはよく知られているが、じつは晩年のみならず、3度にわたりフロリダで暮らしている。
『路上』の最終稿を仕上げ、『ダルマ・バムズ』や『サトリ・イン・パリス』を書き下ろし、47歳の生涯を終えた土地、フロリダ。
『路上』の旅で一度も立ち寄らなかったフロリダに、ケルアックがこだわりつづけたのはなぜか。
日本語圏で流通するケルアックの情報には片寄りが見られる。
英語圏の資料であれば、その偉大な業績とともに、三番目の妻の親族であるサンパス家とケルアックの実子で二番目の妻の子であるジャネット(愛称ジャン)・ケルアックとの間で繰り広げられた血みどろの遺産相続争いにも大っぴらに触れるのが常だ。しかし日本語の世界では、もっぱら「ビートのヒーロー」としての輝かしい姿と酒に溺れた晩年の姿ばかり語られれてきた。
本作で扱う話題も、遺産相続の話同様、日本語圏ではなぜか扱われてこなかった。「ケルアック・ハウス」が発見されてから15年以上経つ。しかし、どうしたことか、この家の存在は日本にはまったく紹介されていない。これが日本語による初めてのレポートである。
この家は現在、文筆家が長逗留しながらじっくり作品を書き上げるための施設になっている。
我が国には文筆家を支援する制度も施設もない。しかし日本でも、この「ケルアック・ハウス」のような仕組みはつくれるのではないだろうか。
現地取材による、独占レポート。
文字数=27,552字
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