本書は、弊社が様々な企業において実施させていただいた、同名の研修を書籍化したものです。受講済みの方、未受講の方、またはこの内容を同僚や部下に横展開したい方などに向けて、研修としてのストーリーや運営方法までお伝えするために、受講者視点の一人称で記述されています。
(本文より)
「私、マネジメントに向いてないのかもしれません。」
どこかで、そんなことはない、という言葉を期待していたような気がする。ところが、溝口さんの言葉は、
「そうかもな。」
だった。ショック。溝口さんは私の反応を眺めている。ちょっと悔しい。落ち込みかけた私に、溝口さんはこうも言った。
「だけど、最初からマネジメントに向いている奴なんて、いるのかねぇ?」
「?」
「自分で言うのもなんだけどさ、昔みたいに誰もが管理職になれるわけじゃない。だから、主任にせよ、その上の管理職にせよ、社員としてそれなりの成果を出してきた奴でないとなれないわけだ。そういう人間ってさ、たいていの場合、管理職に向いてないんじゃないかと、俺は思うんだ。俺もそうだったし。」
独り言のような独特の喋り口。こういう話し方をする時、溝口さんは何か大事なことを理解させようとしている。(中略)
「俺はマネジメントというのは、向き、不向きではないと思う。営業や管理の実務と同様、きちんと意識や知識、スキルを理解して運用できるかどうかだ。だとしたら、それは学んだり考えたりしないと身につかない。だから、三好がそういう努力を何もしないで、マネジメントができるわけがないとも言える。(中略)実務のプレイヤーとして成果を出してきたやつは、そうやって何かを学び、身につけ、実践する才能があるのは、間違いないはずだ。三好も、向いているとか向いていないとか考えず、まずは学べ。」
そう言って渡された紙には、
『信頼関係と動機づけの基礎 ~実践!チームマネジメント研修①~ 』
とあった。見覚えのあるフォーマット。私は三年前に、このシリーズの 『実践!ロジカルシンキング研修』 というのを受講した。あれで仕事のしかたがかなり変わった。実感としては最短距離で成果を出せるようになった感じがする。日向講師の 『実践!』 シリーズ。
「これは個人的な感想だけど、子育てにも使える内容だぞ。お子さんももう小学生だろ。人を育てるってことは、子供も大人も原理原則は一緒だ。俺がこの研修を受けた後、うちのボウズに言われたことがある。最近の父ちゃんは、話がわかるようになった。父ちゃんに言われると勉強しようって気になるのに、母ちゃんに言われるとやる気を無くすんだって。で、それを言われた時に、きちんと、自分の何がよくて、母ちゃんの言い方の何がいけないのかもわかるんだ。」
言語化イコール思考。日向講師の研修の一番根っこにあるコンセプトだ。私たちは言葉で考える。わかっていることは言葉で説明できるけど、わかっていないこと、考えきれていないことは、うまく説明できない。それを溝口さんも言いたいのだろう。
マネジメントがわかる。それはとても魅力的な提案だった。
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