私達日本人は、中学生の頃から何年も掛けて英語の発音を勉強してきた。しかしどういう訳か、ネイティブの話す英語は速すぎてうまく聴取れないし、私達が話す英語も彼らにはなかなか通じない。この原因は、私達日本人が「ホンモノの英語発音」ではなく「ニセモノの英語発音」を何年も掛けて学んでしまったか、又は学びつつあるからだ。
この本のテーマは、読者がこの「ニセモノの英語発音」にいち早く気付いてもらい、それを「ホンモノの英語発音」に矯正する方法を学んでもらうこと。また、ネイティブの英語をちゃんと聴取れる能力を獲得してもらうことである。ちなみに、私達はこの発音矯正法を「エイワジック(AWASIC)」と呼んでいる。エイワジックとは、あなたのリスニング能力とスピーキング能力を治療してくれる、心強いクリニック(病院)のようなものである。
ちなみに、私がこの発音矯正法を思い付いたのは、ある国際会議に講演者として参加したときの不思議な体験からである。当時、私は多くの日本人と同様、英語のリスニングやスピーキングが苦手だったが、この国際会議では、どうしても英語で自分の研究をスピーチせねばならなかった。詳しい説明はここでは省略するが、私はこのときあることを心掛けて英語を話すように努めた。すると、この講演をやり終えた直後、私は自分の脳内に何か大きな異変が起きていることに気付いた。私はこの講演のほんの数分前までは確かにネイティブ英語があまり聞き取れなったのに、この講演の直後から、突然、その苦手なネイティブ英語が私の頭の中にガンガンと入ってきたのである。
私はその後、縁あって音声認識ソフトウエアの開発に数年間携わることになった。そしてこのとき、人間の脳には「話し言葉を認識するためのある驚異的な能力」が存在することを知った。簡単に説明すると、それは人間の話し声を、口や舌などの運動として瞬時に捉える能力*である。つまり、私達人間の脳は、耳に聞こえる音そのものから言語を認識している訳ではなく、それを生み出す筋肉の運動から言語を認識しているのである。
注*:この理論はモーター・セオリー(Motor theory of speech perception)と呼ばれている。
実は、先の国際会議でネイティブ英語が突然聞こえるようになった理由は、私が英単語を発音記号どおりに発音したからではなく、(モノマネ芸人のように)ネイティブの話し方(口調)をそっくりそのままコピーすることを心掛けたからだ。私はその後、この「ネイティブの話し方をそっくりそのままコピーするテクニック」を誰でも使えるものにするため、少しずつ改良を重ねていった。そして、最後に辿り着いたのが、この本でご紹介する「エイワジック」と云う発音矯正法なのだ。
この発音矯正法は、ネイティブが英語を話すときの口や舌などの運動に注目し、それをそっくりそのままコピーする方法である。本来であれば、ネイティブが英語を話す際の口や舌などの運動を真似することは日本人には至難の業である。しかしエイワジックでは今までに無かった「あるテクニック」を使ってそれを誰でも実現可能にした(現在、特許申請中)。
この発音矯正法を数分間繰り返すと、口周辺部の筋肉が少し痛くなるが、その後、今まで聞き取れなかった英語のフレーズがガンガンと頭に入ってくるようになる。また、英文を読むスピードが、以前に比べて格段にアップする。私自身、実際にこの矯正法をやってみて何よりも嬉しかったのは、生の英語をニュースから直に学べるようになったことだ。今までは、文字を読むことでしか英語を学べなかったが、自分の耳をとおして生きた英語が毎日ダイレクトに学べるようになったのである。これは、私の人生において本当に革命的な出来事になった。
本シリーズ「生きた教材で学ぶ英語発音(全三巻)」は、この発音矯正法を紹介するために書かれたものである。第一巻の「エイワジック実践編(ネット動画を使った㊙発音矯正法)」では、この発音矯正法の具体的な実践方法が紹介されている。この巻では、英語発音に関する一般的な解説は極力省いて、すぐにエイワジックが実践できるようになっている。
第二巻の「エイワジック理論編(ジャパニーズイングリッシュの直し方)」では、エイワジックの理論的側面や発音矯正の際に必要な基礎的知識が詳しく解説されている。
第三巻の「エイワジック音素編(ネイティブの英語発音を丸裸にする)」では、母音や子音などの音素の詳しい発音方法とエイワジックで用いる調音コードが詳しく解説されている。この巻は、音素の発音方法がよく分からないときに辞書的に活用して頂きたい。
生きた教材で学ぶ英語発音 第三巻
~エイワジック音素編~
(ネイティブの英語発音を丸裸にする)
第十二章 ステップ3で注意すべき発音
語末がT又はDの発音
語末がP又はBの発音
語末がK又はGの発音
語末がM又はNの発音
語末がNGの発音
語末がLの発音
語末がTHの発音
語末がFとVの発音
第十三章 ステップ4で注意すべき発音(子音編)
TとD
KとG
M
N
NG[ŋ]
L
R
WとWH
Y
FとV
TH
SとZ
SH[ʃ]、S[ʒ]
H
TS、DS、TCH、CH、DG、J
第十四章 ステップ4で注意すべき発音(母音編)
母音の発音方法について
曖昧母音[ə]と曖昧母音に似た母音[ɜ]
「あ」の音に似た英語の母音
「お」の音に似た英語の母音
「い」の音に似た英語の母音
「う」の音に似た英語の母音
「え」に似た英語の母音
第十五章 調音コードについて
調音コードの説明
調音コード一覧
著者プロフィール
一瀬英剛(筆名) 理学博士
1964年生まれ。京都大学理学部卒業(物理学専攻)。大阪大学大学院にて物理学博士号取得。大手ソフトウエア会社に勤務の後、現在デジタルコンテンツ関係の会社を経営。中間表記と調音コードを用いた発音矯正法(エイワジック)を考案する。
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