東京都練馬区、西武池袋線江古田駅周辺で開催されたアートイベント、「江古田ユニバース」初年度の2011年~2012年度までの記録。
出展施設、アーティスト、イベント、その他の活動などを網羅。
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現在、全国的に地域の中でアートを展開させ、地域を活性化させていこうとする動きが見られる。それらはアート・プロジェクトという呼称で呼ばれることが多く、美術、工芸、デザイン、音楽、ダンス、演劇、映画、映像、詩など様々な芸術が展示・上演している。時にはコラボレーションをし、アーティスト同士、地域の人とアーティストの交流も生まれている。
このようなアート・プロジェクトの展開は様々な人の交流を生み、地産や歴史、人材発見に繋がり、今まで見落とされていた地域の魅力を再発見することなる。地域の魅力発見は地域の人にとって「誇り」となり、地域の活性化に繋がってくる。これらの活動は学校や公民館、美術館などの施設と連携されることもあり、時には民家や活用されていない物件が会場となる。
江古田駅は日本大学芸術学部、武蔵大学、武蔵野音楽大学の3大学に囲まれ、駅周辺に学生街が形成されている。また小学校や中学校なども周辺にある。地域の人材的資産が十分にありながら、人材が地域に還元すべき器があまり見られない。特に芸術に関しては発表場所が非常に限られている。
「江古田ユニバース」は地域発の人材・地産が地域の中で生かされるアートイベントを開催することにより、住んでいて楽しくなるような活性化された町作りを目的とするアート・プロジェクトである。また通常、アートフェスティバルは非常に肯定的な要素が強いが、アート・プロジェクトは負の要素にも目を向け、福祉や教育とも関わり、地域が持っている問題に対して向き合っていこうとする姿勢が見られる。
この点では、アート・プロジェクトとは馬鹿騒ぎをし、来客数の増大を目指す単なるイベントではない。忌憚なく大げさに言えば地域性に変質をもたらし、人の生活、時には生き方を変える出来事となる。古来、それらは神事としての儀式であったろう。しかしながら現代の社会においては具体的な社会との関わり合いが必須であり、江古田ユニバースは芸術による手法でコミュニケーションを作っていく。
江古田ユニバースはこの江古田という地名と大学を意味する「university」を捩(もじ)って、森羅万象(または世界)を意味する「universe」を使うことで、この町が長い時間を掛けて壮大な夢に挑戦をしていくという望みが託されている。巷では芸術の計画として「芸術の森」や「芸術の町」などという呼称がされることがあるが、それを最大解釈し、「芸術の宇宙」とする。また英語表記の場合、江古田を「ecoda」とすることにより、economyやecologyに対しても積極的に関わっていきたいという願いも又託されている。名前とは託された願いなのだ。そして江古田ユニバースとは江古田の歴史の中で生まれてこなかった「ifの世界」を目指そうとする荒唐無稽なプロジェクトなのだ。
総合ディレクター 三田村龍伸
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